大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和35(オ)481 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人小山忠秋の上告理由第一点について。

原審の証拠関係に照らすと、「被控訴人(上告人)は次男Dに妻帯させ本件家屋

で洋品雑貨商でもさせたい意向であり、結婚の相手方も一応定つているとはいえ、

本件解約申入当時は、Dはまだ税務官吏として俸給生活をしていたものであるし、

最近は税務官吏を免職されているものの、それも最近のことであつて、D自身が将

来洋品雑貨商として生計を立てたい旨の確定的意思を有すること及びその具体的計

画ないし準備をしていることについては必らずしも明らかとはいえないから、前示

被控訴人の意向は具体性、現実性に欠けると認むべきである」旨の認定は是認でき

る。所論は原審が適法にした事実認定を非難するか、または、右認定と相容れない

事実を前提として、原判決に所論借家法一条の二の解釈適用の誤りがあることをい

うものであり、採用できない。

同第二点について。

原判決挙示の証拠によれば、(一)本件家屋の賃貸借に際し、被上告人が他に家

屋を新築ないし買い入れたときは本件家屋を明け渡す旨の約定がなされていた事実

はなく、また、被上告人は本件家屋の北方同じ街路に面して二戸の家屋を買い受け、

また、新築したが、右は他に賃貸し家賃を取得する目的に出でたものである旨、(

二)被上告人は右二戸の家屋を訴外EおよびFに賃貸中であるが、判示のような事

情から、同人らより明渡しを求めることはきわめて困難である旨および(三)仮り

に被上告人が右二戸のいずれかの家屋に移転しうるものとしても、右家屋は本件家

屋と同一街路に面しているとはいえ繁華街を遠ざかり、ために菓子店として従来の

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收益を維持することは困難である旨の原審の認定は是認できる。しかして、右事実

その他原審が賃貸人賃借人双方の事情として確定した判示諸般の事実関係のもとに

おいては、上告人のした解約申入は正当事由を具備していないものとした原審の判

断は首肯できる。所論は、原審の認定しない事実またはそれと相容れない事実を援

用して右判断を攻撃し、また、原審において主張判断を経ていない権利濫用の観点

から原判決を論難するものであり、援用できない。

同第三点について。

原審において、訴外Dが税務官吏を免職された事実を判断の資料として顧慮して

いないというのは、原判決を正解しないものであり、また、該事実あればとて直ち

にD自身が将来洋品雑貨商として生計を立てたい旨の確定的意思を有するものと認

定しなければならないものではない。原判決には所論の違法はなく、所論は採用す

るに由ない。

同第四点について。

原判決は所論引用のごとく判示し、判示小屋のうち二坪五合の部分の建設をもつ

て正当事由に関する判断を左右すべき資料となしえない旨判断したものである。右

判示に係る事実認定は挙示の証拠に照らして是認できるし、また、法律上の判断は、

該建物部分の建設を目して、本件家屋賃借権に当然付随する敷地使用権の範囲内の

行為と解したことの当否はともかく、いまだもつて被上告人の不信行為とはいえな

いとした結論において正当といわなければならない。所論は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 池 田 克

裁判官 河 村 大 助

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裁判官 奥 野 健 一

裁判官 山 田 作 之 助

裁判官 草 鹿 浅 之 介

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